日記

いわゆるオタクの趣味語り日記。百合とラノベが主食ですが無節操。書痴。偏愛に妄想、ネタバレや特殊嗜好まで垂れ流してますご注意。 本家は二次創作サイト。

(no subject)

唐突に鎖に繋がれた蓉子が書きたくなったとかなんとか。

そしてシリーズ化しそうな気もなきにしもあらずというかなんというか。

その視線は甘く、彼女の身体は中心から指の先に至るまで優しく、かけられる声はいつも暖かく。ああ蓉子が愛しい、この狂おしいほどの安寧を、愛しいからこそ引きちぎってしまいたい。異性間の婚約指輪にも似た、されど結婚指輪とは似ても似つかぬ鎖の一番脆いところを選んで手をかけて。蓉子の首筋に手に足首に課せられた枷を引き攣れる程に引っ張って。歪む表情の甘さを、優しさを暖かさをこころゆくまで味わいたい。願望が渇望となって膨れ上がる。

――せい、

凛と、響くはずの声は少し掠れている。げほりと空気を吐き出す音、代わりを吸い込む前に口を塞ぐ。生温さに包まれた指、洩らす呻きが触覚を通じて伝わる。表面張力の限界を越えて、透明な雫が瞳から直接床に落ちた。唾液は私の腕を伝ってからフローリングを汚す。くっと笑みを堪えて、蓉子より自分の息が乱れていることに初めて気がついた。

心までぎりぎりと縛られて。呼気も途切れる程締められて、重い楔で止められて。冷たい金属の端を持つだけで微笑う、肌との境目を踏みにじる行為ですら受け入れる蓉子。嬉しそう、なんて錯覚だ。非現実に決まっている。

鈍色に滲む鎖が見える。太い綱を編み込んだようで、必死で縋る私の腕のようで、荒れ狂う感情の権化のようで。弱々しい抵抗を、儀式めいた形式ばったものに過ぎないと片付ける私の理性はもう理性とは呼べない。苦悶の表情によって満たされる私の腕にかかるのは受け取れない愛の重圧。奪うことしかできないくせ手にした端から溢して行く。水音ばかりがずくずくと響く。

――蓉子

刃がめり込む感触が、指に残って離れない。痛みと呼ぶのもおこがましい苦しみすら私は耐えられず、彼女になすりつける。べったりと汚れる、朱に映える紅は映える。咲き誇る薔薇は茨に搦め取られその頭を垂れることを強いられる。誰よりも強い蓉子が。甘く優しく暖かい蓉子が。

その強靭な精神の前で、私は項垂れる。

けれど膝を折ったままで私が感じたのは、確かに愉悦の一種だった。