(no subject)
閑話。「私を構成するひとつ」から数年経つとこうなります(多分)。
対になる蓉子のSSもあるのですがなんかそちらもあらぬ方向に……。いっそ別の話になりそうな勢いです。
……聖って、やさしいわね
もう少し、なにかひと押しがあれば眠れそう、だけどまだちょっとだけ意識の上層を漂っていたい。終わった後の緩やかな時間を引き延ばしたい。
はあっと吐いた息はもう普通の温度だけど身体の底にほんのり残る熱がしあわせをふたりにばらまいている。
え?
あんまり、焦らさなかったから?
でもそれって今日は、っていう限定がつく気がするしなあ、とぼんやりぼんやり。腕の中の蓉子はやわらかい存在。
わたしが、着信音を変える、っていう選択肢も、あったのに
漢字の発音っていうものが存在しそうなくらい、不器用に浮かべられたことばたち。
正直頭の片隅にもなかった話題を放られて私はしばらくそのまま何も返せないまま。
……わたしが、これで良いって、言ったから?
つらそうな声。もしかして結構気にしてたのかな。
あんな機械の設定のひとつやふたつ、ちっともたいしたことないのに。蓉子と色々決められたのがたのしかった、しあわせだった、そっちの方が大切なできごと。
あの映画をえらんでたのだって本当は蓉子が目を輝かせてみてたのがいちばんの理由。
せい?
ああ、このことばこそが、顎のラインに触れられる指こそが、私にはやさしい。
もぞりと体勢を変えられてちょっとばかり痛い股関節なんてどうでもいいから蓉子をがむしゃらに抱きしめたくなる。両の腕で蓉子をまるごと全部捕らえていて、素肌を思うさまむさぼっていて、それでも飽きることなくわき上がる果てのない欲望。
やさしいのは、蓉子だよ
ぎゅ、と壊してしまわない程度に力を入れて、蓉子をできうる限り私に密着させようとする。規則正しい胸の膨らみと縮みが私のお腹の上で行われている。
……答えになってないわよ
こたえ、なんて、本当は蓉子も求めてなかったくせに。
疲労感でかきまわされる思考の力がだんだんと低下して。今日は私の方がはやく寝ちゃうかも、とちょっぴり残念な気持ちで思う。蓉子の寝顔が好き。私の隣で素直に丸まる無意識のうちの蓉子が好き。蓉子が好き。
……ようこ
好きだよ、と実際にことばにしたのかはよく覚えていないけれど。
私の胸に顔をうずめた蓉子は確かにうれしそうに笑ってくれて。
しあわせだな、って、溶けかけの意識に無意識の波が混ざった頭の中で、思った。