不細工ではない、はず
〈合計して僕〉ひとつめ/10
御題の順番的には3番目。
最初から最後まで聖蓉バカップルな予定です。糖分が欲しい年頃。
ねえ蓉子、私の顔好きー?
……何よ、突然
へらへらと笑って、後ろから蓉子におぶさるように抱きつく。くっつくことが主目的、見られてないけど多分気づかれてる表情と狙い。
ねえねえ、
甘えたいの?
迷うことなく私の頭に行き当たる蓉子の腕に鼻を埋めるとほんの一瞬だけ動きが止まって。
なんで?
だって目に見えるものを欲しがるじゃない、あなた
こすこすと擦りつけるといいにおい。密やか過ぎて誰にもばれない、マーキング。
愛してる愛されてる実感が欲しいって意味ではきっと的確な蓉子の指摘がすぐ近くで溶けて。
んー
好きよ、聖の顔
甘さがどんどんと増していく空気を思うさま吸い込む。
整った顔立ちも、白くて滑らかな肌も、優しい口元も、
何かとてもやわらかいところをくすぐられる感覚に目を細めて、身を任せて、もたれかかって。
すっきりと通った鼻のラインも、長い睫毛もその奥で綺麗に澄んでいる瞳も、
くるりと振り向かれる。どちらが抱いていてどちらが抱きついているのか、囲われた空間にはただとても近くにお互いがあって。
そうね、まっすぐに私を見てくれるあなたの目が、一番好き
きっぱりと言い切られる、断定される心地よさ。あるべきものがあるべき場所にしっかりと固定される、安堵感。
複雑な願いを丁寧に解きほぐして優しく手渡してくれる蓉子に嘘なんてひとかけらもなくて。蓉子が好きだと言ってくれたばかりの顔をもう一度、ぎゅっと押しつける。
嬉しそうな、笑い声が聞こえた。