(no subject)
さよなら三人称(笑)。
実はいつかのSS(の後日談)の続きだったり。いい加減共通軸の話はまとめようかなあ。
「…蓉子は痛かったことあるの?」
「ん……?」
とろとろと空気が重い。浅い呼吸と怠さはもう馴染みの感覚で、聖の唇があちこちに押し当てられてくすぶる熱に最後の悪あがきをさせるのを、ぼんやりぼんやりと感じていた。慣れないことをしたせいもあって、どこの筋肉も気力を使わなければ動かせない。
「さっき、床だったから、とか言ってたでしょう」
囁きとともに耳の後ろに。身勝手な下心のない触れ合いは、私をあまりに素直にさらす。
「あぁ……
ん、だいじょうぶよ、たいしたことはなかったの」
夢見心地はうつつのあわい。眠さに負けたくないのは、しあわせだから。眠ってしまったら、もう、おしまいだから。
「いつ?」
「え?」
「痛かったのは、いつの話?」
ふ、と噛まれた耳朶に、身体がひくついたのは痛かったからだ。私を浮かべていた靄が晴れる、聖はいつの間にか私の全身を回り終えている。
「…おぼえてないわ」
「うそ」
もう何周目になるのか、今夜だけでも数えられない私の脳は、真剣な聖をはぐらかしてあの微睡みに戻ろうとする。邪険にするつもりはないの。でも今はうまく言葉にできないの。頑張ればできるけどしたくないの。
「そうね、嘘よ。
でも聖は優しいから、良いの」
「……わかんないよ」
「いいの。」
(あなたには、わからなくて。)