日記

いわゆるオタクの趣味語り日記。百合とラノベが主食ですが無節操。書痴。偏愛に妄想、ネタバレや特殊嗜好まで垂れ流してますご注意。 本家は二次創作サイト。

テロメア

:染色体の末端にある保護構造。

江志です。

抱きとめた彼女からはひなたのにおいがした。目を細め落ちてゆく微睡みには満足の吐息が溶けていた。矛盾の上に安住できる図太さは、繊細に見える志摩子の中に確かに通っている。そもそもそうでなければ私とは付き合えない。我ながら悪女ねえ、ともらした笑みは呆れるくらいに反省の色がなかった。幸せはゆるくぬるくほのあたたかい。

これだけで良いんです、と震えた声帯の持ち主は、ことばどおりにぎゅうと密着する。飢餓よりは角の取れた、それでも切実な願望が漏れ出し、私に染みていく。時折震える睫毛がくすぐったい。同じくらいに私をくすぐる髪の先は、ひとところには留まらずに風に踊る。男では無いがこれ以上据え膳につけあがられても困る。エアコンのリモコンに手を伸ばしかけた私を、心細そうに見上げた志摩子に、うっかり自分の唇を重ねてしまった。

きょとん、とした瞳が、理性の色を取り戻した。拗ねられるかしら、と肩を竦めた私に次いで見せたのは、蕩けきった表情。こちらがお手上げするしかない、見事なまでの無邪気な美しさ。

……これだけ、ね。

故意じゃないからタチが悪い、とどちらの呟きも口には出さないまま志摩子の髪を片手で手繰る。存分に甘えさせてあげよう。何せ非常に希少なことに、彼女にこねられるわがままは嫌なものではない。