(no subject)
乃梨子と瞳子。
ねえ私ってさ、志摩子さんが好きなんだよね
存じてますわ
……嫌いだったら姉妹になんかなりませんわ
ぷいと顔を背けたのに、愉快そうな顔がわざわざ回り込んでにやけた表情をさらす。まるで扇風機に合わせて動いてるこどもだ。普段の乃梨子さんの様子(主に志摩子さまに対してとか志摩子さまに関してとか)を思い返して子犬に訂正する。
志摩子さまのことばかりですのね
うんそれ志摩子さんにも言われた
は?
瞳子のことばっか話してるって
何話してるんですか!
がったんと机が揺れて波打ったが、そんなものに構っている場合ではない。きいんと空気が割れたのは私自身の声のせいだ。我ながら立派な腹式呼吸だった。うへえ、と耳を押さえた乃梨子さんの、わざとらしいことと言ったら!
嫌だった?
そういう問題じゃないわよ!
知りたいというより問い詰めたいがいざ知るのは怖い気がする。うっかり崩した言葉遣いに見せた満面の笑みが、正真正銘私に向けられているという事実に高鳴った胸のうちなど、この人を食った友人には絶対に見せてあげるものですか。