朝ですね……。
微妙に続き物になるようなならないような。
諸々の手続きのために電車を利用した際にがーっと書いた奴の加筆修正です。さあどこまで地の文が足せるだろうか(笑)。
「……んー」
やかましい音の根源を手探りで捜す。目覚ましくらい理不尽に人間に嫌われる存在もないと思うけど正直これは悪魔の呼び声だ。いくら好きな曲だって時と場合というものがある。
「……むう」
ぱし、と掴んで、サイドキーを探すのも面倒だったから適当に押し開いて闇雲に力を入れる。携帯が意外と頑丈で私は随分と助かっている。
「……はれ?」
寝ぼけた頭でもなんとか認識できる手触りの違い。
あれ、この携帯って?
「ちょっと、何やってんのよ!」
「え?」
すぐ横から手と口が出てきて私の頭は展開に置いてきぼりになりっぱなし。
夜中に一度起きたのか、昨夜脱がせたはずの寝間着の袖が私の目の前を掠めていく。
「人の携帯電話を、いじらないでちょうだい」
ぱしりと奪われる小さな重み。
「え、あれ、だって、私の目覚まし」
「……私は着信音になってるの」
あーもうどうやって言い訳すれば良いのよ、と文句を言いながら立ち上がる蓉子。
……言い訳? え、私、なんかしちゃった?
「ちょっとごめんなさいね」
通り際さらりと撫でられた寝起きの頭に理解力はまだ備わっていなくって。
扉を隔てた向こうから漏れ聞こえる会話に、どうやらおばさんらしい、なんてぼんやりと考えていた。