そして聖蓉。
お絵かきBBSのラフ絵の隣に添えてある寸劇くらいのをちまちま続けるのが好きです。続きものとはとてもいえませんが。30話くらい続けたらそれなりになるのかな(笑)。
(グッドオールドディズおまけ2/聖蓉)
よーこ、そろそろ休憩……ってあれ、電話?
あ、ええ、江利子から
ぱたんと折った音がパソコンの駆動音とまざる。部屋にたちのぼる珈琲の香りも、焼き菓子の香ばしさを吸い込んで私の平静を手助けした。
へぇ、何話してたの?
何……なのかしらね
なにそれ
説明しようのないことを、無理に伝えようとすればそれは捏造になってしまう。事実から外れたことを告げるのは嫌いだし聖相手なら尚更だ。歯の間に挟まったものは、不可解にぐにりと曲がり、弾む。
電話番号の確認、かしら
胡散くさいなあ
江利子はそう言ってたもの
あ、嘘なんだ
しまった、と誘導尋問に引っかかった自分に臍をかむ。今は親友以上でも以下でもないって言ってるじゃない。あなたに後ろめたいようなことは何もないわよ。
ねえ、何してたの?
湯気の立つマグカップを乗り越え身を乗り出して来た聖に、上体を反らすことで逃げようとしたものの、咄嗟の反応は児戯にも満たない。わざと落とした低い声、嫉妬以外の炎も混ざる瞳での追求から、逃れられるなどお互いに思っていやしない。
ふ、と鼻腔をくすぐる甘い香りに、記憶の糸がほどけたことにして。私は昔語りを始める。