日記

いわゆるオタクの趣味語り日記。百合とラノベが主食ですが無節操。書痴。偏愛に妄想、ネタバレや特殊嗜好まで垂れ流してますご注意。 本家は二次創作サイト。

恒例うだうだ精神話

……あれ、もしかして今年初聖蓉SS?

純文レベルの不健全さと純文にはとても及ばないクオリティうっかり三人称仕立てでお送りします。今年もマイペースにやっていきます。

もがく蝶の鱗粉を、愛しげに舐めた挙げ句にその毒に冒されたのは、誰だったか。

いたるところで靄が渦を巻く蓉子がそう考えたのには、さしたる意味も必然性も有りはしなかった。意識をこちら側に繋ぎ止めておくための思考。フェルマーの二項定理でもどうにも煮詰めきれない英語のレポートでも、それこそ今日と明日の夕飯のことでも何でも良かったのだ。この靄に澱む重みから気を逸らしてくれるものならば。書名も作者名も記憶にない、おそらくは無名にかぎりなく近い作品のそんな一節を選んだのには、それこそ何らかの意味でも存在しているのか。紛らわす命題をそう摩り替えても構わない、曖昧な論理の網の破れから隙間風がふきこむ。

ぼやけた木目は潤んだ瞳の証左で、蓉子が背けるように首を捩りうなじをさらした帰結でもある。捕食者から? ……聖のまなざしから。彼女の舌と指による行為は蓉子の身体と精神のどちらにも影響を及ぼす。強烈ではあるが、しかしどうしようもなく中途半端に。視線だけが最後まで蓉子を貫いて、諦めと満足の吐息を吐き出させることができる。両者は本質的には同じものだ。閉塞の果てに辿り着いた者だけが終わりを自らに与えられる。壁越しのノック。崩れた羽根ではとべない。

上気して震え、時に痙攣さえ起こす身体は、もがく対象を蓉子の想像の外に置いている。浮かんだ一節の前後を思い出せぬまま、記憶を浚おうともしないまま、声を漏らさぬよう食い縛るのは、否定語による懇願に似て。目を合わさないよう凝らしているのに聖の瞬きの様まで捉える感覚は、当たり前のように形而の上でほつれる議論より目の前の快楽を選んだ。

心の深奥まで穿たれた穴をうすくなぞり、目を閉じる。これ以上はくれなくていいと果てに辿り着きたくない臆病者が叫ぶのを頭蓋に近い脳の神経で聞いた。聖は無心に求めている。熱を帯びた息が時折よりは頻繁に短い髪を揺らす。

結局は蝶は地におちる。そこが果てでないと、誰が言えるだろうか。