地平線
〈見つめる〉5/5
お付き合い有り難うございましたー!
次は……白い子たちかなあ……。江志も書きたいですが。何にせよ聖蓉の裏CP的な話がやりたい。
「あっついねぇ」
「本当」
夏の真ん中。久しぶりに会った蓉子は綺麗だった。最近は見るたびにより綺麗になってる気がする。歯の浮くような思考、という形容は正しいのかどうなのか、私は眠さを堪えて。陸に背を向ける。蓉子とは並んで立つ。
「追いかけっこでもする?」
「やめてちょうだい」
つれない返事。ここまで駆けてきたことでもう充分、と言わんばかりの蓉子。セパレーツだけれど割合健康的な水着が、私たちが恋人だという痕跡を隠している。ビキニと呼ぶにはちょっと慎ましやか過ぎる。どんな状況でも逆手に取ればそれなりに楽しめる。
「でも青春じゃない?」
「やるならひとりでどうぞ」
最もそのあとの文句と不機嫌を覚悟すれば蓉子を巻き込むのは実に容易い。なんだかんだで私には甘い蓉子。他の人に対する優しさより優遇されるぬるま湯は私を丸裸にする。浸かる私はありふれた風景をゆるゆると見る。さして興味のない美術品を、順路に従うついでに眺めるように。きっとろくに記憶にも残らない。
「行事好きなくせにぃ」
「炎天下で走り回れるほど元気じゃないもの」
「若くない、の間違いじゃないの?」
「じゃあ若いあなただけで楽しめば良いわ」
拗ねないでよ、冗談じゃんかぁ。
軽い会話。覗き込むことに長けた蓉子。見逃すことが得意な私。もう慣れた水温に浸かる足首。そこから上のパーツがふたり分、水から突き出て並んでいる。右側には蓉子がいるから、焼けつく日差しも波しぶきも本当は海そのものすらどうでも良い。
「……青いわね」
「そだね」
空と水で分けられた線に私は地平を見る。蜃気楼でも陽炎でもなく、ただの妄想の具現を、遥かな線に。目の錯覚に。
隣の蓉子だけを、実感として持って。