江志。
某所の絵と設定に滾ってしまったんだ……うん。残念なことに無断なので気づいた方、そうっとしておいてください……。
いつかの聖蓉や現白にいつかこっそり繋がります。……うまく続けば、ですが。
すいすいと人混みをすり抜けていく彼女は、お姉さまみたいで、蓉子さまに似ているようで、それでもやっぱり独特だと思う。
「遅いじゃない」
「すみません」
叱る気のない口調に、誠実さの欠けた謝罪。珍しいとは自分でも自覚しながら、つい軽い受け答えをしてしまうのは、この人の前ではいつものことだ。
「やっぱり手、繋ぐ?」
「結構です」
ほんの少し期待もこめてはね除けてみせれば、寸時の驚きの後で江利子さまの肩が震えた。その表情が見られただけで十分、と華やいだ心をかき乱すかのように江利子さまは私の手を掴む。
「そこまで期待されちゃやらないわけにはいかないわねえ」
にやり、と肉食獣の笑み。ああ大型の猫に似ているかもしれない。得意気に、獰猛に、こんなにも美しいのに――
「嫌だった?」
「……嫌ではありません」
引き立てられるように引っ張られて、あちらとこちら。人気のない階段際のベンチで食べたアイスクリームの味は、まだ口の中に残っている。唾を飲み込んでも江利子さまと会話しても薄まらない。
大通りの交差を抜けて、ようやく止まった足は、柄にもなく浮かれていた。ストール越しに届く冷気が、心地よく思えるくらいの自分の状態に、心中で苦笑する。もうどちらかというと私の方が絡めている指先はひんやりとしていて。赤くなりかけた頬を冷やせるかと考えてからそれのもつ意味に気づきますます赤面する。
「どうしたの?」
「…いえ」
「本当にいやなら離すわよ?」
「違います!」
同時に指先に籠めてしまった力に、まばたきをした江利子さまは、思いがけず優しく笑った。嬉しそう、との区別が、残念なことに私にはつかなかった。