それなりに満足だ
〈合計して僕〉10/10
お付き合いありがとうございました。
結構楽しかったのでこの方式またやろうと思います。取り敢えずは聖志か江蓉を予定。
高い高い悲鳴で終焉を迎えた後、文字通りそのまま力尽きてしまった蓉子の身体を綺麗にして、幸福で満たされた心に突き動かされるまま。腕は重いし色々疲れてはいるけど軽い興奮状態から抜けきれなくて、冴えた目が蓉子の裸体を見つめている。規則正しく上下する胸、こちらを向くように横たえた身体が、無防備に私にさらされていて面映ゆい。
すうすうと眠る蓉子。私の傍で安心しきっていてくれるという、なんだか信じられない今の現実。
胸の裏側を掻かれる擽ったさに身を竦める手足が蓉子を求めて動こうとする。触れるだけで、蓉子に愛されてる実感が得られるなんて、幸せすぎて泣きそうになる。刹那の恋も永遠の愛情も要らない、今蓉子がいてくれれば良い。約束しなくともずっと一緒だって信じられる関係が嬉しい。
燃え盛る激情も嫉妬の煉獄も。胃を焼く絶望もない穏やかな日常。積み上げる愛撫、肌を重ねる優しさ、あなたの目に映る私。蓉子が微笑み、声をあげ、そして私に跡を残す。二の腕についた引っ掻き傷に触れる。嗚呼数日後には消えてしまうこの細傷でさえ。蓉子のくれたものだと思うと。
過日を思う。毎日がただ輝いていた日々。今となれば苦しい、純度百パーセントの恋愛。失う反動で深手を負った、私を蓉子はそっと見守っていた。他に何もできなかったの、なんて述懐されたほろ苦い笑み。私を楽にしてくれる居場所。塗り替えられなどしない。しないままで、私を受け入れてくれた。
不実だとは思わない。誰にだって過去はある。否定する方が、目を耳を塞ぐ方が、よっぽど問題だ。不健全だ。
――蓉子の、受け売り。
穏やかに眠る素顔に、唇を落とした。恥ずかしがる表情も蕩けた瞳も見られない、自分のためだけの口づけ。純度百パーセントの愛。たまにだけで良い。そう、こんな夜に一度だけと決めて、大事に守るくらいがちょうど良い。
蓉子が微かに息を漏らす。紅い唇が、私の名前を形作ったように見えて、応えるために私はもう一度顔を近づける。
ふたりの吐息が混ざりあい、ゆるくほどけ、私たちの回りをやさしく囲った。