(no subject)
江蓉。だらだらといちゃいちゃ。
黄紅ってどうにも黄が保護者に見えます。令祥とか由祐とか江祐とか令蓉とか(笑)。どれも好きなんですが書いてませんねそういえば。
……あったかいわ
そう?
ぴたりとくっついて、甘えるように手足が巻きつく。擦り寄る四肢の先は確かに底冷えの冷たさがある。仄かに朱が掃かれた頬や、柔らかに潤む瞳とは、とことん対照的な身体の端っこ。ことりと肩に落ちた重みのすぐ下を、蓉子の吐息が撫でていく。
江利子がね、あったかいの
幸せそうな蓉子は何処となく幼さを帯びていて。思わず抱え込んで、どさりと自分の身体を倒す。きょとんとした表情が私の上に乗っている。ちっとも重くない。ひんやりとした足の先が僅か離れてまた絡みついた。
良い眺めね
そう?
怒るでもなく、拗ねるでも恥ずかしがるでもない。傾げられた小首は少し遠い。おいで、と手を差し出せばおとなしく体重を預けてくる。再び肩口にかかる息は、今度は私のくぼんだところを通っていく。
ほら、
少し温度の近づいた足の甲、二の腕はもうほとんど同じ。首もとの辺りをくすぐる綺麗な黒髪の方が冷たい。艶は夜に紛れて、匂いに質感ばかりが伝わる。共用のシャンプーなのに蓉子の髪はひどく甘い。口に出せば、江利子の方が、と反論。いつものびしりとしたものじゃない、私だけの特別仕様。言い含められても構わないとお互いが思ってる。
やっぱり、蓉子よ
お揃いじゃ、駄目なの?
違う方が面白いじゃない、なんて言っても問題は無いのだろうけれど。勿論構わないわよ、と返すと蓉子が嬉しそうに笑うから。
蓉子の髪が好き。腰が強く、まっすぐで、ぬばたまの輝きで。でも私はそれが蓉子の髪だから好きなのであって、自分がそうありたい訳じゃないのだ。
組み上げた理論はぐすぐすと崩れ、溶ける。蓉子の態度だけで、仕草だけで。
江利子、綺麗だもの
ふいと下って頬擦りされたのは、私の心臓の上だった。一瞬はとくりと跳ねるものの、すぐにまた緩やかになる鼓動。慌ててくれない私の器官に、蓉子は少し不満顔。くっと笑ってその頬に触れる。メイクの落ちた唇を拭うように辿る。
……あ、
口に含まれる寸前で、手を離した。睨みは上目遣いに相殺されて甘く。部屋全体が冷え込んできたから暖房の代わりに布団を被せる。もぞもぞと心地よいところを探す蓉子は、もう一度上まで這い上がってきて止まった。
蓉子、あったかいわ
そう?
じんわりと伝うぬくもりは多分に優しさが混ざりこんでいる。凛とした瞳がぼんやりと霞みかける、そのくらいの蓉子が一番暖かいと思う。欲の無い子が求めてくれる、これは私だけの特権。与えられるより嬉しいと思う、不器用な愛情表現。
……ん
丸くなった蓉子を緩く抱くと応えるように、かすかに肌がついばまれた。
ふたりの体温はもう当たり前のように混ざりあっている。