(no subject)
よいしょ、と籠を持ち上げる。そんなに重くはない、水を吸った二人分の洗濯物。ばさりと皺を伸ばせば、暑い日には心地よいくらいの冷たさが手に。ベランダの熱気が、気持ち良く緩和される。
蓉子は朝からご機嫌だ。単純に家事をしなくていいから、なんて理由じゃないんだろうな。私が、こういうことをするってあんまりないから。今更新婚気分? っていうか、うん、多分そんな感じ。
家の中の事は分担しようって、決めたのにね。
朝の弱い私のために蓉子が朝ごはんを作って、帰りが遅い蓉子のために私が晩ごはんを作る。その他のことは半分っこ。だけど、アバウトだった区切りをきっちり分けちゃうのが蓉子で、アバウトさをたてにしてついついサボってしまうのが私。掃除も洗濯も、いつの間にか蓉子が大抵やってくれていた。私の昼寝や読書の間なんかに。
忙しい人が忙しいのは半分は自分の責任って本当かもなあ。随分失礼なことを考えて、出てきた蓉子のブラジャーをつまみ上げる。笑って振ってみせても、顔をしかめることもなく、あくまで優しくこちらを見てくる。見ていてくれる。抱え込まれたジーンズのラインは、未だに私を喜ばせる。
こんなに嬉しがってくれるなら、もっとしっかり動かないとなあ。並んではためくふたりのシャツが、幸せなんだって主張している。ああでも当たり前になっちゃったら、こうして見守ってくれることもなくなっちゃうのかな。それは勿体無い。とっても勿体無い。
取り敢えずは、いつもありがとう、って伝えようか。聖さんお手製のコーヒーを添えて。最後の一枚に洗濯鋏をとめて、軽く伸びをする。眠たげな蓉子が何か行動を起こす前に、先手必勝。
からからと網戸を開けて、くしゃりと撫でた蓉子の髪は、さらさらで気持ち良い。すぐ作るから、眠っちゃわないで。おやすみのキスを落としながら矛盾したささやき。
愛しの蓉子に、暖かな愛を。
多分そろそろ終わり。
まとめは……もうSS詰め合わせ方式でいいかな……。