つきあけ
……もう4日? そんなばかな……。
正統派にすれ違い意地の張り合いが書きたかったのだけれどやっぱり終わらなかった。
脳内妄想は爛れ切ると一周して戻ってきます。いつものことです。
ふたりともがまだあの新緑の制服に身を包んでいた頃の話。
まだ硬すぎる上っ面を衝突させては、衝撃を生傷と勘違いしていた頃の話。
そう、今ならお互いに思いっきり恥ずかしがりながら笑い飛ばせる、笑い話だ。
「好きだよ」
「聞き飽きたわ、それ」
蓉子の笑みは完璧にしてさらさらと流れていく。
気のおけない友人同士で完璧な笑顔なんてやりとりされるもんか。
一縷の望みに縋り続ける私は悲しみも寂しさも握り潰して喜びに変換しようとする。
もがく様を静かに見つめる蓉子の視線は途切れることがなく。
私の告白はより軽薄に滑らかになっていく。
無様な話。
自業自得じゃない恋愛関係なんて存在しない。
ふたりきりの薔薇の館、朝早く、吐く息は白いままで目の前の蓉子は紅薔薇さまのままで暖房を入れてくれるなんてやさしさを持ち合わせていやしない。
「朝っぱらから……」
「そう、私に告白するために早起きしたわけじゃないでしょう?」
ふたりきりなのにそう続けた蓉子は(紅薔薇さまの仮面を被ったままの、蓉子、は)くすくすと私の軽口を笑う。可笑しげに、おかしなくらい整った笑い声。
それならとにっこり笑い返す私の後ろでこぽりとポットが音を立てる。
どうでもいい、私にはどうでもいいのだけれど蓉子はすっと横をすり抜けてそちらに向かってしまう。