聖蓉で←江。
間女であることに真剣に向き合ってみた。(はずだった。)
NTR属性持ち疑惑が最近私に生じましたが……いやそんなまさか……。
「弱い手ね」
痛々しい手だと思う。傷つくことを厭わない、のではない。傷つくことしか知らないのだ。
昔からこんなに愚かな子だったろうか。振り返ろうとして、思い留まった。
恋愛は人を馬鹿にさせる。
この子も、私も。
知らぬふりをするのにはいい加減倦んでいた。しかし肯定してみせたところで幸せには誰もなれないと来ているのだからやっていられない。とうとう流れ出した涙を拭ってやる。私の末端をかたく握りしめている蓉子自身の手で。
そんなにすがりつかなくとも、私はこうしてあげるというのに。
「ばかね」
そう言われたがってたから、かなえてあげた。与えるだけでいいというのは成程大層楽なものである。
私はこの不毛な停滞に納得しているけれどね。聖への解を私に探す蓉子の不毛が漏らした吐息が何かの罠かと思うくらい甘くて、私は蓉子に引導を渡すのをまた先伸ばしにしてしまう。
長続きするわけがないと思っていた聖と蓉子の同棲生活は、もうすぐ2年になる。