睡魔に負けた
昔「しあわせ分譲中」という頭が春なSSを書いたのですがその派生モノ。CPとしては聖蓉・祐瞳でした。
次回続き書いて終わりです。眠いです。
一本取られた。
注文は決まってるのにメニューを開く私を見て、祐巳ちゃんはまだ笑ってる。
私のことを、じゃなくて、幸せでたまらないって表情で。
「ごちそうさまです」
「いえいえ」
今日のブレンドとココアとフォンダンショコラ。白エプロンがよく似合う店員がにこりと笑って、サービスで笑い返したらちょっと赤くなった。中々に可愛らしい。昔の祐巳ちゃんほどではないけれど。箱庭の子羊たちくらいかな。ああでも童顔だけど20越えてそうだなあ。
佐藤聖の女の子観察眼は無駄に高性能なのだ。もっとも真相があらわになる日なんか十中八九来ないのだけれども。
(一か二の可能性に当たったら蓉子の機嫌は間違いなく降下するしね。可愛いんだから。)
「そういえば、」
ぴこりと跳ねるツインテールを目の保養にしながら、
「私のお姉さまはストレートが好きだったなあ」
さっきの店前での問答を蒸し返してみる。
祐巳ちゃんが浮かべたのはちょっと意外そうな顔つき。それは記憶より随分とおとなびてはいたけれど隠さず駄々漏れなところは相変わらず祐巳ちゃんそのもので、安心のその仕草に私は息を漏らしてしまった。
笑うというにはゆるく、ため息なんかではもちろんない。かといって感嘆ほど大袈裟でもない。
膨らみかけた頬が戻されてわざと怒ったような顔。
おお。どことなく、紅薔薇の貫禄。