妹と孫
ものすごく王道を目指してみた紅薔薇さん家。やっぱり先代時空が好きなんだよなあ。
新世代は原作で満足してるとも言います。でもいい加減そろそろひと波乱起きても良いのにねえ(笑)。
しおれる祐巳ちゃんの顔にはくっきりと、「祥子とけんかしました」と書いてあった。
「白薔薇さまじゃなくて良いの?」
「絶対、からかわれますもん」
……確かに。
「黄薔薇さまもだし、由乃さんじゃ参考にならないし、令さまは……」
ぶつぶつと人物評をしながら指を折っていく祐巳ちゃんのつむじが、頷きに合わせてぴこぴこと動く。我ながら変なところに目をつけたものだ、なんて思いながら髪を撫でてやる。これで落ち着いてくれれば良いのだけど。
「なあに、私は余り者?」
「い、いえっ、そういうわけでは!」
ぶんぶんと手と頭が振られ、私の手が弾き飛ばされた。わあすみません、とわたわたとますます収拾がつけられなくなっている彼女は多分私の元にきた理由をすっかり忘れてる。とにもかくにも必死ですという全身。まあ正直可愛い。聖や江利子の、からかって苛め倒したいとかいう歪んだ愛情はわからないでもない。実際に実行してしまう彼女たちの精神は理解できないが。
「大丈夫よ」
「な、なにがですか……?」
「祐巳ちゃんと祥子」
紅薔薇さまってエスパー!?
むしろほかのことで相談されると思う方がおかしいと思うのだけど。喜怒哀楽の大きな祐巳ちゃんはあまりに全身で驚いてくれるからこちらとしては笑うしかない。
「それにたぶん祥子ももうすぐ来るわよ。」
祐巳とけんかしました、って大きく顔に書いて、ね。
ほんの少し、嫉妬したくなる、仲の良さは勿論微笑ましさの方が勝る。この子がこんな気分を味わうのは2年後か。聖のような例もあるから断定はできないけど、妹と孫を見守る祐巳ちゃんは、想像してみたらとてつもなく暖かかった。
「ええっ!?」
予言者どころか超能力者にされそうだ。慌てふためきながらそれでも頬を緩ませる祐巳ちゃんは、どこからどう見ても妹の顔。
未来の孫に見せたあの暖かさを、今は祥子に向けてあげて。言ってもわけがわからないだろうから、まだ慌てている祐巳ちゃんの頭を撫でながら、心の中でそっと頼んだ。勿論です、と祐巳ちゃんは、ぴこりと跳ねる髪と赤くなった表情で頷いてくれた。