せいよう
事後のエゴ。
眠る彼女を見つめる私は、如何様な表情をしているのだろう。
夜目にわずか浮かぶ、蓉子のかんばせ。先刻までのように思うままに操れるわけでもない。無防備と手放しにいうには苦しげな素顔。
なにがだれがそうさせているのか。私でなければいいと願う反面、私以外のものに心を傾げているなんて許し難いと思う自分がいる。
つめたい素肌。巣食う悪夢について尋ねたら蓉子はこたえるのだろうか。いつものように、理路整然と。
そんなのあまりにかわいそうだ。
現を離れてる間くらい、蓉子は楽に生きるべきだ。
私にとらわれないで。
もちろん自明のそれは身勝手な空想の中ですらいえない。
思うだけでも、現実にしみ出してきてしまうかもしれないじゃない。
明日起きたら蓉子はもう朝食を作っているのだろう。ほどけた蓉子を見るために寝つかなかった私を、起こす声が呆れてるのはあと5分がもうさんかいめだからだ。
たまには蓉子を起こしたいな。でも既得権益を手放さずにやるには、眠らないしかないからな。
現の蓉子だってできるなら怒らせたくないし、困らせたくない。夢でまでごめんね。それ、私だよね。
願いをかなえるおまじないのように額に口づけた。
願わくは今の表情が、優しいものでありますように。