聖蓉。
久しぶりに痛い話。ほんのり年齢指定?
私たちの間に性差は存在しない。
あるのは体格差と体勢の優劣、どちらも不利な私はけれどその気になれば容易くひっくり返せる。
つまり抵抗しないのは私の意思。薄目を開けても聖とは目が合わない。縛られたかのように動かない手足は、固定されているわけではない。
まったく何をしているのだか。つきかけた溜め息を唾とともに飲み込む。投げ出された手は肩から手先までが冷たい。だって動かすと聖は怒るのだ。抱かれる相手を抱きしめるくらい、いいではないか。
愛情の介在を認めない聖は、抱く、などという言葉は知らぬふりをする。
「……蓉子、犯すよ」
瞳の奥に絶望が見える。
今から聖の方がひどいことをされるかのよう。
間抜けな強姦の宣言も、怯える気配もない醒めた心情も、何もかもが滑稽だった。
目を伏せた聖。私の胸に手を当て、強気を見せようとして震えを伝えてしまう、みっともない聖。
拒絶なんて、抵抗のひとつも要らないほど易しい。
呼吸の延長にある息を漏らす。ひくりと揺れる聖が、ぎゅうと目を瞑って、押し倒した私を貪ろうとする。拒絶も受容も、きっちり同じだけ聖を傷つけることを、私は知っている。
後に得る満足と後悔がどちらも大きくなる選択をした私は、細い女の腕に縫い止められた。
噛むことも出来ないくせに爪だけは立てる弱い少女は、私よりもあたたかい。