(no subject)
惚け話は喫茶店、という固定観念でもあるんだろうか自分。
鉛筆回す佐藤も昔書いた気がするな……。
頼まなくていいの?
いーの
にこにこと笑いを絶やさずに目の前に座る佐藤さんはくるくるとマドラーを回している。学食では1本だけの箸を行儀悪く動かしていたしレポートを一緒にやったときはシャープペンシルだった。要するに癖なのだろう。どうでもいい。
そんなどうでもいいことを考えてしまうのは思ったより混んでいる店で注文した品がくるのが思ったより遅く、佐藤さんがずっと笑みを浮かべているからだ。適当な愛をばらまくサービススマイルならともかく、本心からにじみ出たとしか表現できない、幸せそうな雰囲気をずっと隣で受け続けるというのはつまり、有り体に言って終わらない惚け話を延々聞かされているのである。これで疲弊しなくてなんだろうか。講義のノートを貸したのはこっちなのに、罰ゲームも真っ青ではないか。
しかしどうでもいい手癖を改める気配のない佐藤さんは、私の感情に気づく風もなく店内を見回しては鼻歌まで歌っている。ああ、モンブランを頼まなくていいっていう意味がわかったわ。だから言わなくていいわよ。
カトーさんこそ、いいの?
え?
モンブラン
ああ、別に
ふぅん
気配りではなく、興味からかき回してみただけだろう会話。ふらふらくるくるは気まぐれに続き、恐ろしいことに惚けオーラは止むことなく周囲に春を撒き散らしている。
まあこの喫茶店自体割と花が咲きっぱなしの雰囲気ではある。水野さんはこういうところを好むのかしらね。