戯言睦言
吸血鬼な蓉子いいよね。
でもたぶん前にも似たようなの書いた。書きかけ。
――絶対に、嫌よ
蹲って丸まって、私を含む世界の全てを拒絶して。全身を痙攣に近い震えにおかされながら、蓉子は私を含む世界の全てをそうやって守ろうとするのだ。虚ろな瞳。見えはしないけれど。心から見られたくないと思っていると知っているけれど。
でも私は見たい。
右の手で顎を持ち上げると驚きに見開かれるその黒曜。一拍置いて激しく沸き上がる抵抗に、今の私はあっさりと突き飛ばされる。まだ蓉子の力は人智を越えた強大さを維持している。いつもより尖った犬歯が、汗と唾液でぐしゃぐしゃになった口元が、一瞬しか見られなかったからこそ私の脳裏に焼きつけられる。ばか。かすかに涙声。
衰弱しきるまで私に見守らせることを結局は強要している蓉子。荒い息。愛しいから腹立たしい。はやく諦めてしまえ。私を貪ることを。求めることを、理性を飛ばしきるまで許さないなんて、愚の骨頂でしかない。
あいつにはもっと素直だったくせにと私がうっかり口にしてしまう前に、はやく。