4時間以上も
一体どこをさ迷ってたんだ……まあなんとか無事にたどり着いたならいいか。変なところに漂流されたら目も当てられない。
単発で江蓉。続けたいけど続くかな……。
好きじゃなくていい、と江利子はいうけれど。
好きでいい、とはいってくれない。
だから私は。
……一体何をしているのだろう。
ふいと紛れ込む逃避行動は、大抵が自問自答の形になる。江利子の私物に手を伸ばす私が、私に小さくかける問い。
あざ笑うことを前提にした問いかけ。答えの愚かさを、答える愚かさを知っている。
生み出す脳は、思考を拒否したいのだ。
ゆるりと笑めば、目測を誤った指先が使われなかった平皿を弾く。噛み合わない世界。ばかな私。材料より調味料より前にわざわざふたり分用意するくらいには。
浮かれていたのだ。来ないかもしれないと少しだけ予感していたから余計に。浮わついたごまかしが白々しく机に残る。洗濯した彼女の服はいっそラッピングに近いかたちで袋の中。一緒に仕舞いこんだ心を取り出してやり直したい。
来られなくなった、のだと知っている。
パワーバランスの傾きは私に告白もさせてくれない。
代わりの愛をすべて受け流す江利子の現在を思って、想像して、勝手に傷つく私の部屋に、江利子の私物が沈黙を落とした。