告白ごっこ。
江蓉です。これで最後……のはずだったんですが、ぼやぼやとネタだけはわいてるんでいつかまた。書けたらいいな。
延長戦……といえば両軍お疲れさまでした。うん凄かった。
「で、嫉妬してたんでしょう?」
「しつこいわよ」
今が盛りの銀杏並木をふたりで歩く。一緒に残ります、と言った私にくすくすと鍵当番を言い渡したお姉さま方は、もうだいぶ前に帰ってしまわれた。夕陽と微風との相乗効果でなかなか壮観な紅葉も、毎日見ていれば望外の感動、とはいかなくなる。聖はもう帰ったかしら。重たい鉛玉を呑み込んだ私に、江利子は目を向けることなくただ隣を占拠してくれている。
ゆっくり歩いてもあっという間、なのはその門が江利子との別れ道だからだ。習慣のお祈りに籠めるものに少し悩んで、目を瞑りながら苦笑い。でもいつまでもこうしているわけにもいかない。
「それじゃ、ごきげんよう」
「待って」
「え?」
素っ頓狂な声が出たのは不可抗力だ。
ぐぐっと近づいた江利子は、唐突に私の頬を手で撫ぜて、ひとりで納得したかのように頷いた。顎のラインに添えられる指はまるでキス、するときのようで。ぎりぎり学園の敷地外、でいったい何がしたいのよ。
「一緒に帰りましょう」
「はい?」
「だから、蓉子の家まで歩かせてよ」
蓉子が嫌じゃなければ、だけど。
正直悪趣味の域の至近距離で話しかけてくる江利子はそれはもう見事に人の退路を塞ぐ。嫌なわけはない。嬉しくない、わけもない。どうせ校内でしか一緒にいられないのに長々と待ってたのは何でだと思ってるのよ。勿論江利子だって知ってるから、嫌味として口に出せもしない。
どちらとも取れる頷きで返答した私に、江利子はくすりとして呆気なく離れた。あ、と口の形だけが声をあげた私の髪が、風より優しい手で撫でられる。
「蓉子の家着いたら、電話貸してね」
迎えに来てって家に電話するから。
叔父さまやお兄さま方が報われないわ、とため息をつく。言っても無駄なのは今更だから徒労に終わる労力を敢えて出そうとは思わない。
「もうちょっと幸せそうな顔しなさいよ」
呆れた風情に呆れてるのはこっちよ、と態度で反論するとするりと腕が回った。慌てて振り解く。ついでに家の方角に歩き出す。
いい加減拗ねないの、という的外れなことばには無視で応えて許してあげるタイミングへのカウントダウンを頭の中でゆっくりとスタートした。